人生を豊かに彩るWEBマガジン

監修者

吉川 美津子

社会福祉士
葬送・終活支援ソーシャルワーカー
吉川 美津子

1990年代半ば、葬儀専門人材派遣会社でセレモニースタッフとしてお葬式のお手伝いを始める。その後、東証一部上場「公益社」で葬儀施行、営業、セミナー運営などの業務に携わり、続いて大手墓石・仏壇店「はせがわ」の営業スタッフとして活動。駿台トラベルやホテル専門学校の葬祭ビジネス学科を運営に携わるようになったころから、少しずつ現場を離れて、コンサルティング業務を行うようになる。現在はコンサルティング業務の傍ら、社会福祉士として介護現場でも働いている。葬儀ビジネス研究所のホームページはこちら

時代に合わせたお墓の多様化

時代に合わせて、お墓の形態は多様化が進みました。2000年以前は和型墓石と呼ばれる縦長のお墓がほとんどでしたが、2000年以降から横長の墓石や、特徴的な色の墓石が登場するようになり、見た目の変化がありましたね。それから、墓石のほかにも納骨堂や樹木葬などのように、新しいお墓のかたちも増えていきました。

また、お墓の形態だけではなく、お墓を守る手段も変わってきたと思います。今までお墓は先祖代々継承していくことが一般的でしたが、お寺さんや墓地の管理者がお墓の管理を行ってくれる「永代供養」への注目が高まりました。

そもそも永代供養は、無縁になってしまったお墓の遺骨や、遺族がおらず行き場がなくなってしまった遺骨を合葬墓に供養するために利用されていました。しかし、1989年に新潟県・妙光寺さんが永代供養を利用して「継承を必要としないお墓」をつくったのです。

大きな塚状のお墓を建てて、宗派を超えて受け入れ、後継ぎを不要とし、生前に契約するよう積極的に売り出しました。これが大成功し、全国にも永代供養が広まっていきましたね。

吉川さんがこれまでに執筆・監修した本の一部。左から、『ゆうゆう 前向き終活バイブル』(主婦の友社)、『身内が亡くなった時の手続きがまるごとわかる本』(晋遊舎)、『ゼロからわかる墓じまい』(双葉社)

妙光寺さんのように、その時々の人が抱える悩みにアプローチして、業者さんも商品を考えているわけです。現代人の悩みというと、「後継がいないからどうしよう」とか「後継ぎが娘しかいないから、お墓を守ってくれるのかどうか……」といった悩みが多いので、これからも永代供養墓や都市部のお墓が増えてくると思います。

さらに、どんなお墓に入りたいかという要望に合わせて商品をつくることもあります。そのため、お墓の種類をよくよく見ていけば、自分にマッチングしたお墓が見つかるかもしれませんが、今はあまりにも形態が増えているので、すべてのお墓を把握するのは難しいかもしれませんね。
私も最新のお墓を追うのに一苦労です。

パッケージとして売り出されるようになったお葬式

私は1990年代半ばから葬送業界に携わってきましたが、葬送業界はこの20年間で徐々に変化をしてきたと思います。まず、1995年〜2000年くらいにかけてお葬式の料金が透明化してきました。各葬儀社が料金表や見積もりを出し始めたのです。
2003年以降になると、ネットでも集客をするようになりました。それまでは電話帳やチラシが集客のメインとなっていましたが、ネットの普及とともに広まっていったイメージです。

また、2009年に「終活」という言葉が誕生してからは、お葬式やお墓を含め、「自分の死後についてトータルで考えておきたい」という人が増えてきた気がします。
こうしたニーズを受けて、葬儀社はパッケージをつくるようになりました。たとえば、「小さなお葬式」といったパッケージプランを打ち出して全国展開するような葬儀社が増えたのです。こうした流れはここ10年間くらいで強くなってきたと思います。

お葬式もお墓も形態が増えたことによって選択肢の幅が広がったわけですが、生前に準備しておくかどうかは、その人の状況によります。
準備をしないまま突然亡くなった際でも、家族と良好な関係であれば問題はありません。先祖代々のお墓に入れるように手配してくれるでしょう。
ですが、家族との関係が悪いとそうもいきません。火葬後に遺骨の引き取り拒否をされてしまうケースもありますので、そうなると、生前の準備が必要なのかなと思います。

また、死後に関して特別なリクエストがある場合にも準備は必要ですね。郊外のお墓に入りたいとか、散骨をして欲しいとか。
ただ、こうした希望は必ず実現必須な事項ではないので、たとえ遺言書に記載したとしても、希望が叶えられるかは家族次第といえるでしょう。

これからの葬送業界と終活

普段は企業向けの相談などを中心に行っています。企業側の「こんなことがしたい」という要望に合わせて、コンサルティングやそれに合った企業のマッチングをしています。そのほかは執筆や取材が多いです。
また、社会福祉士としては特別養護老人ホームなどで現場に入って介護職を5年くらい行っています。

葬送業界に携わり、年間100本以上もの取材を受けるという吉川さん

葬送業界は長く関わってきましたが、これから業界がどのように変化していくのかは正直予想がつきません。ひとついえるのは、古くから世界各地で死者を弔ってきた歴史があるので、人を弔う文化はなくならないと思っていることです。
ただ、戦後にできた祭壇文化や、葬儀の主流である告別式、先祖で守るお墓……。こうした文化は薄れてしまうのかな、と思っています。欧米諸国やヨーロッパでは「○○家」としてお墓を守る文化はありませんし、だんだんと個人のお墓というスタイルになる可能性もあると思います。

また、昨今は「終活」が流行していますが、私はあえて「終活」しようと行動しなくてもいいのではないかと思います。コロナウイルスで家にいる時間が増えた期間に「少しだけ掃除してみようかな」と考える程度でいいと思っていて。
高齢者はたくさんものをもっている人が多くて、家にはメルカリで売れそうなものとかが結構あるんですよ(笑)。なので、お孫さんを家に呼んでメルカリの使い方を教えてもらって、一緒に売るのはよいと思います。お孫さんとの会話も弾みますし、ものも減りますよね。
私の場合は大型のものをオークション代行業者に依頼してものを売っています。相手とのやりとりもしなくて済みますし、処分すると費用がかかってしまうところが、逆にお金になりますから。

単に処分するだけだと気も重くなってしまうかもしれませんが、誰かとコミュニケーションが取れたり、お金になったりすることで、楽しみながら整理を進めていくことが、結果的に終活につながればいいのではないかと思っています。

葬祭ビジネス研究所
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