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春を祝して日本酒を楽しむのが大人女子

四季と関わりの深い飲み物

特集 春こそ、人生に祝福を! 2021.3.31

取材・文:花塚水結

みなさん、春を楽しんでいますか?
春と言えば、あたたかくなってちょっと開放的な気分にもなるので、ちょっとお昼にお酒を飲んでみようかな、なんて思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、日本酒スタイリストとして活躍している、スマイルブリューカンパニー代表者の島田律子さんに、春におすすめな日本酒の楽しみ方を教わりました!

実は四季や祭事との関わりが深い日本酒。日本で日本酒が楽しまれてきた背景を知ることで、新しい楽しみ方が発見できるかもしれません。

 

日本酒は四季折々楽しめる飲み物

 

花塚:野菜や魚には季節によって旬のものがありますよね。季節ものの日本酒というと、冬に熱燗を飲むくらいしか思い浮かばないのですが……。日本酒にも季節によって旬のものがあるのでしょうか?

島田:はい、日本酒は四季で楽しめるお酒なんです。冬のお燗酒もとてもおすすめですが、春ならではの楽しみ方もありますよ。

花塚:春ならではの日本酒! ぜひ、教えてほしいです!

島田:もちろんです!

日本酒について教えてくれた、日本酒スタイリストの島田律子さん(左)。父親の晩酌につきあったことをきっかけに、日本酒が好きになったという

島田:日本酒は、12月の終わりころから「しぼりたて」「初しぼり」と呼ばれる「新酒」ができあがるのですが、それが冬に楽しめるお酒としてさまざまな種類がでています

花塚:ビールでも「一番搾り」なんて言いますよね。

島田:冬はその「新酒」を、できたてほやほやのフレッシュさを楽しめますが、春になると、ロゼ色のお酒やスパークリングなど、春にピッタリの心躍るようなお酒が出てきます。

花塚:視覚的に華やかになるのですね!

島田ラベルも春をイメージしたピンク色や桜がモチーフになって、花見酒や春酒などとも呼ばれていますね。味はほんのり甘酸っぱいお酒が多く出回るのが特徴ですね

花塚:日本酒に甘酸っぱいイメージはなかったですが、春らしくていいですね。夏はどんなお酒が出るのですか?

島田:夏は日本酒の需要が落ちる季節なんですよ。やはり暑いので、キンキンに冷えたビールが飲みたくなったりしますよね。

花塚:つい冷たいものを欲してしまいますよね。

島田:ですから、冷やしておいしい白ワインのような酸味の効いたお酒や、飲むとスキーッとする超辛口のお酒や、オンザロックにするとおいしい原酒のお酒など、「夏酒」と呼ばれるものが、たくさんできます

花塚:日本酒をオンザロックで飲むなんて、ちょっと豪快な気分になれそうです。秋はどんなものが特徴ですか?

島田秋はひやおろしです。春にできあがったお酒を蔵の中でひと夏かけて貯蔵させ、秋になると出荷されます。少し熟成感の乗った味わいになるので、秋の味覚にも合うんですよ。

花塚:なるほど。季節に合わせてつくり方にこだわりがあるのですね。

島田:そうなんです。元々日本酒は冬のあいだだけつくられるものだったのですが、今では商戦的な限定ものや、通年出回っている通年酒など、本当にさまざまな種類がありますね。

花塚:え、日本酒って冬のあいだにしかつくられていなかったのですか?

島田:そうです。元々、日本酒の原材料はお米なので、秋に実ったお米を刈り入れた後、冬のあいだにつくられていたものです。冬の寒い季節は酒造りに適している気候なのです。また、農家の方や漁師の方などは、冬は閑散期になりますよね。本業ができない冬のあいだだけ蔵人としてお酒をつくり、出稼ぎをしていたのです。そのため、蔵元さんは社長業で、蔵人は出稼ぎの方というのが昔ながらの日本酒づくりの世界でした。

花塚:蔵元の社長さんが直接つくっていたイメージがありましたが、そのような歴史があったのですね。

島田:そうなんです。ただ、今では冷蔵設備がありますから、四季醸造と言って、夏でも日本酒をつくっている蔵元さんもありますし、蔵元の社長自らが直接お酒づくりに携わっていることも多いですけどね。

 

祭事ごとに飲まれてきた日本酒

 

花塚:冬はお燗酒がいいとおっしゃっていましたが、あたたかくなる春ならではの楽しみ方はありますか?

島田:祭事に合わせた楽しみ方があります。元来、お酒は祭事ごとに飲まれてきた歴史があるのですが、春の祭事と言えば、花塚さんは何が思いつきますか?

花塚:春の祭事ってなんだろう……。お花見はイベントですもんね。

島田:実は、お花見も祭事だったんですよ。今は春のアウトドアや、イベントのように楽しまれていますが、みなさん、桜の下ではお酒を飲んでいますよね。

花塚:外飲みの代表格的な存在になっていますよね。

島田:はい。ですが、お花見は奈良時代や平安時代から楽しまれてきた祭事なんです。昔、桜の木は田んぼの神様の依り代と言われていました。桜が散ったころに田植えを始めて、田んぼの神様が宿る桜が咲いたら木の下でお米でできたお酒をいただく。そうして次のシーズンも豊作になるようにと願っていたのです。

花塚:え、お花見にはそんな意味があったんですね! お花見の席では日本酒を飲むのが正式というか、歴史に倣った行為というか。

島田:そうなんです。ですから、少しでも豊作になるようにと思いを馳せて、お米でできた日本酒を飲んでほしいな、なんて思っています

 

酒器にこだわる楽しみ方

 

島田:そして、外でおいしいお酒を飲むときには “マイお猪口” を推奨しているんです

花塚:“マイ箸” ならぬ “マイお猪口” !

島田:お花見だとプラカップに名前を書いてお酒を飲むことが多いのかなと思うのですが、ゴミになってエコではないですし、風で飛んでいってしまうこともあるじゃないですか。でも、 “マイお猪口” を持ち寄れば、ほかの人と被ることはないですし、お猪口談議にも花が咲いて楽しめると思うんです。 同時に、すごい酒飲みみたいな雰囲気も出るんですけどね(笑)

花塚:たしかに、「お酒を飲むぞ!」という並々ならぬ意気込みを感じます(笑)
でも、四季やそれを重んじる日本人の情緒も感じられて、また違った楽しみ方ができますね。

島田:そうなんです。お酒はただ楽しむだけのものではなくて、日本には四季があって、季節や祭事に合わせて神を敬い、縁起を担ぎ、感謝の気持ちを込めてお酒を楽しんできた歴史があるので、日本人ならではの美しい心を見直せるものだなと思います。
そんなわけで “マイお猪口” を推奨していますが、日本酒はグラスで飲むのもおすすめなんですよ。

花塚:グラスって、ワイングラスとかですか!?

島田:そうです。ワイングラスって、ワインの香りを拾うための形状になっているんですね。丸みを帯びていて、飲み口が窄まっていて。それに少しだけワインを注いで、スワリングすると、一気に香りが入ってきます。

昔の日本酒は、お米を磨く技術がなかったので、結構雑味が混じっていてあまり香りがよくなかったんです。なので、香りを拾わないお猪口を使って飲んでいました。でも今は精米技術も醸造技術も上がり、香りのいいものがたくさんあります。ワイングラスに日本酒を注いで、香りも一緒に楽しむ。春はそんな楽しみ方のおすすめですね

 

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島田律子

日本酒スタイリスト(日本酒造組合中央会認証)。タレント。日本航空(JAL)国際線CAとして5年半勤務後、タレント活動を始める。2000年「唎酒師」(SSI)取得後、2001年 日本酒造組合中央会より「日本酒スタイリスト」に任命される。TVや雑誌への出演、コラムの執筆など、メディアでの活動を多数こなす。その他、講演やイベントの司会・出演、酒器や日本酒化粧品の商品開発なども手掛け、また近年、訪日外国人に向けた日本酒の会主催にも力を入れるなど、国内外に向け日本酒の魅力を広く発信する。
スマイルブリューカンパニー: http://www.smile-brew.com/
Instagram: https://www.instagram.com/shimadaritsuko/?hl=ja
Amebaブログ: https://ameblo.jp/ritsuko-shimada/
島田律子

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