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若手編集者みゆももが初挑戦!「陶芸」って奥が深い!(前編)

目指せ、喜美ちゃん! 不器用2人組が新たな扉を開ける

特集 自分をあたらしくする 2020.8.05

取材・文:花塚水結

NHKの連続テレビ小説『スカーレット』で、主人公のモデルとなった、陶芸家の川原喜美子さん。毎朝15分、陶芸家として邁進する主人公の姿を見て、何となく「陶芸いいなぁ」と思った人も多いのではないでしょうか。
そこで、編集部の2人が陶芸体験に挑戦。陶芸を教えてくださったのは、江古田陶房の西村真一郎さん。初心者で、不器用な2人にも丁寧に教えてくださいました。前半は、陶芸の1日体験をレポートします!


教えてくれた先生
西村真一郎先生
陶芸教室江古田陶房 代表。武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科卒業。個人のレベルに合わせて、幅広いジャンルの技法を教えてくれる。江古田陶房のホームページはこちら

体験した人
花塚水結(みゆ)
編集者。出勤の準備をしつつ、朝ドラをチラ見するのが日課。たまにガン見して慌てる。Twitter:@_I_eat_hotate

出口夢々(もも)
編集者。美術も図工も苦手な生粋の不器用人間。Twitter:@momodeguchi

 

陶芸に初挑戦

花塚出口:本日は1日、よろしくお願いします!

西村:よろしくお願いします。

花塚:前期の朝ドラは陶芸家の先生がモデルになっていましたよね。毎朝ドラマを観ているうちに、陶芸をやりたい! と思ったのですが、実際に体験するのははじめてなんです……大丈夫でしょうか?

西村:ドラマ、やっていましたね。どなたでも最初ははじめてなので大丈夫ですよ。

出口:何となく「食器類をつくるのだろうな」くらいに思っている素人なのですが……そもそも陶芸とはどんなものなんですか?

西村:そうですね、陶芸とは焼もののことですが、実用的に使える食器類のほかに、美術品としてもつくられていますよ。
日本の陶芸の歴史は、縄文時代につくられていた縄文土器が始まりだといわれています。

江古田工房に飾られた先生の作品たち

出口:縄文時代から歴史が続いているんですね。

花塚:朝ドラの主人公は「信楽焼」を専門にしていましたが、「信楽焼」とはどのようなものですか?

西村:陶磁器のなかの1つです。滋賀県甲賀市信楽を中心につくられていて、日本六古窯の1つにも数えられます。

出口:なるほど。古い歴史があるのですね。信楽焼はどんな特徴があるのですか?

西村:信楽焼は土味を生かした陶器です。
信楽焼に使われる土には長石や石英、それに鉄分などを多く含んでいて、高温で焼くことで長石の白色の粒が信楽焼独特の土肌を生み出してます。
それから、高温で焼くために、油分を多く含む赤松の木を薪として使用していますね。

先生の信楽焼の作品。白い粒が模様となっている

花塚:素材が模様を生み出すんですね……。

西村:はい。それから陶器を焼くとき、「還元」という焼成方法だと、窯のなかに置く位置よっても土肌の表情が変わるんですよ。

出口:窯のなかの位置で土肌の表情が変わるんですか? すごく繊細なんですね。

西村:ドラマのなかでも出てきたと思うけど、雪でつくったかまくらのようなかたちをした、穴窯を使うんですよ。

花塚:あ、出てきました!

西村:そうそう。で、薪の炎が直接あたっていた部分は「火色」になったり、灰が陶器に降りかかれば「ビードロ釉」になったりね。
それから、燃え尽きた薪は灰となって穴窯中に積もりますから、その灰で陶器が埋まった部分は黒っぽい「窯変模様」ができたりもするんです。「焦げ」ともいっていますけど。だから、陶器の模様がどんなものになるかは「運」も含まれます

出口:なるほど……。ひとつとして同じ作品はできないということですね。

西村:そうなんです。では早速はじめていきましょうか。

花塚・出口:はい! お願いします。

西村:2人は、何をつくりたいですか?

出口:私はコーヒーや紅茶が好きなので、カフェオレボウルを。

花塚:私は……どんぶり!

西村:なるほど。わかりました。
つくり方はいくつかあるのですが、今回は薄くスライスした粘土を型に沿わせてつくる「タタラづくり」にしましょう。

粘土を貼るボウルのかたちをした型

西村:では、はじめに土を練っていきます。まず、粘土を均質にする「荒練り」をしてから、粘土の空気を抜く「菊練り」をします。
菊練りは、土を楕円状にして立ててから始めます。両手で包み込むようにして、11時の方向に倒したら少し回転させて起き上げる。

菊練りのお手本を見せてくれる先生とそれを見る私たち(白:出口、黒:花塚)

 

練れば練るほど、変なかたちになっていく……

花塚出口:先生、むずかしすぎます!(笑)

西村:最初はむずかしいよね。最初にいった方法をイメージしながら、こうして練っていくと、菊のようなかたちになるんですよ。できるようになるには練習しかないですね。

先生の菊練り。菊の花びらのように粘土が折り重なっている

花塚出口:すごい……!やってみます。

やはり変なかたちになっていく

花塚出口:できないです……(笑)

西村:むずかしいよね。体験教室のときは時間も限られているから、私が生徒さんの代わりにやってしまうことも多くてね(笑)

解説しながら助けてくれる先生

花塚:(などと、喋っていてもできている……。先生すごい……)

西村:まぁ菊練りはこの辺で。
次は自分のつくりたい陶器の大きさに合わせて、土を叩いて薄く広げていきます。
カフェオレボウルは23センチくらい、どんぶりは30センチくらいかな。

それぞれのつくりたいものの大きさに合わせて、丸い型紙の大きさまで粘土を広げる

出口:叩くんですね。では思い切って……

花塚:って痛い! でも、痛いけどストレス発散になります(笑)

ここぞとばかりに日頃のうっぷんを粘土にぶつけていく2人。ただ、これがまた痛い……

西村:(笑)。それぞれのサイズまで広がったら、もう叩かなくていいよ。
次はこれを薄くスライスしていきます。粘土の両脇にタタラ板を敷いて、ワイヤーの切糸が浮かないように引っ張ってみて。

薄く伸ばした粘土をワイヤーの切糸で薄くスライスしていく。切糸をピンと張りながら引っ張ると親指が痛いだろうからと、軍手を貸していただきました

出口:これはすごい! 切れている感触がわかる!

粘土の両脇の板を押してサポートしてくれる先生

花塚:硬い……! よいしょっ……と。

西村:うん、いいね。
今土の断面が糸で波打ったようになってるから、これをヘラで撫でて、滑らかにします。

糸で切った断面を滑らかにしていく作業に苦戦する出口

出口:力加減がむずかしい……。

西村:ヘラを伏せすぎないとうまくできるよ。

出口:なるほど!

先生から出口へのアドバイスを横で聞いて、うまくこなそうとする花塚

花塚:ヘラを伏せすぎず……できました!

西村:いい感じですね。では、できたら型に被せます。
ただ被せると、下のほうが傘みたいにひらひらしてるので、これをギュッと寄せていくんです。一気にやるとシワになっちゃうから、回しながら少しずつね。

花塚出口:はい。

キノコの傘のように広がっている部分を寄せていく

西村:うん、ある程度できたら、型からはみ出ている部分をカットしてください。

弓のようなかたちをした道具で型からはみ出た部分をカットする先生

出口:カットするんですね……
……あっ欠けちゃった!

粘土のかけらを、欠けてしまった部分に戻そうとする出口

西村:多少は大丈夫ですよ、慌てないで(笑)

出口:はい。

西村:続いて、お皿の底部分にある高台をつける場所にインクで印をつけます。穂先を見て、脇を閉めて固定するだけ。

出口:同じ場所に筆を保つのがむずかしい……。

花塚:穂先だけを見ているつもりなのに、目線が回る粘土を追いかけてしまいます(笑)

手回しろくろを回しながら高台をつける部分に印をつけていく

西村:ん……まぁよしとしましょうか。次は、お皿の底の高台をつけます。
少し土を取ったら、細い棒状になるように延ばしていって、さっき赤い印をつけた部分に沿って棒状の粘土をつけていきます。粘土の真ん中をもって、押さえつけるようにね。

出口:はい。

棒状の粘土を取り付けて高台にする

西村:できたら、高台とお皿の接着面を撫でて境目をなくしていく。内側も外側ね。

花塚:はい。

どんぶりの部分をしっかり抑えながら、指で撫でて取り付けた粘土との境目をなくしていく

西村:カフェオレボウルの場合は、高台に少し高さを出して、末広がりにようなかたちにしていきます。
手回しろくろを回転させて、少しずつ高さを出しながら薄くしていきます。次に手回しろくろを勢いよく回しながら、高台部分に水をつけて大体8時くらいの位置に両指を置いて整いていきます。

出口:はい。……あっ!

歪んでしまった高台

西村:手回しろくろが止まると歪んでしまうから、止まったらまた回して。

出口:なんとか……!

西村:そうそう。それで、末広がりの部分は指で少しづつ広げていきましょう。こんな風に摘んで。


末広がりの高台をつくっていく先生

花塚出口:すごい!

西村:じゃあ、カフェオレボウルは乾かしていきましょう。
それで、どんぶりは高台を整えましょう。

花塚:高台ですね! わかりました。

高台を延ばしていく花塚

西村:延ばしたらトースカンという道具を使って余分な部分を針で短くしますよ。手回しろくろを回しながら、ゆっくりと内側に針を差し込んでいってみて。

花塚:緊張するな……。

高台の高さを整える

花塚:一気にどんぶりっぽくなった!

西村:でしょう。
出口さんはカフェオレボウルに模様をつけたいといっていましたが、どんなのがいいですか?

出口:サンプル作品にあった、線がぷっくり膨らんだ模様がいいです。

西村:イッチンですね。ケーキなどをつくるときに使うディスペンサーに、粘土の泥漿(粘性の強い液体)を入れて絞り出して模様にする技法です。
どんな模様がいいですか?

出口:そんなむずかしいことはできないので……そうですね、縦にたくさん線を引いていくとか……。

西村:縦に線を引いていくのもむずかしいんですけど、まぁやってみましょう。
線が傾かないように、何本か印をつけて、その線を見ながら引いていくと傾くことも少ないと思います。

つけた印を見ながら模様をつけていく

出口:ここ最近で一番真剣に取り組んでいるかもしれない(笑)

真剣に模様をつけていく出口

花塚:たしかに、そんなに真剣な姿を見るのは、はじめてかもしれない……(笑)

西村:そうなんですか(笑)。もう少し真面目に働かないと上司の方に怒られますよ。
では、つくった人がわかるように、お皿の底に名前を彫りましょう。それから、最後に釉薬を選んでください。

お皿の底に名前を彫る。自分ひとりでできた、唯一の作業かもしれない……
好きな色の釉薬を選ぶ2人

花塚出口:できました、先生、ありがとうございます!

左:出口作(カフェオレボウル)、右:花塚作(どんぶり)

体験を終えて……

昔から美術の時間やものづくりが好きだったので、陶芸もきっとできる! と意気込んで体験に臨みましたが、先生にフォローしてもらうばかりでした。でも、大きなどんぶりをつくることができたので、満足です。
私は休日によくラーメンを食べるので、できあがったどんぶりに入れて食べようと企んでいます。(みゆ

美術も図工も技術も苦手で、とにかく手先が不器用なので終始不安でしたが、先生にかなりフォローしてもらったので、コロンとした自分の手になじむカフェオレボウルができました。
一つひとつの作業に集中して取り組むなんて仕事以外ではめったにないので、濃密な時間を過ごせました!(もも

 

後編はこちら

 

陶房情報
陶芸教室江古田陶房
〒176-0005
東京都練馬区旭丘1-65-3
西武池袋線江古田駅より徒歩4分
都営地下鉄大江戸線新江古田駅より徒歩5分
お問い合わせ:03-3950-1146
お申し込みフォーム: http://www.ekodatoubou.com/contact.html
  1. […] 人も多いのではないでしょうか。 そんな陶芸を編集部の2人が体験をしてきました。前半では陶芸の体験記をレポートしましたが、後編では陶芸の魅力を聞きました。前編はこちらから […]

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西村真一郎

陶芸教室江古田陶房 代表。武蔵野美術大学 造形学部工芸工業デザイン学科卒業。個人のレベルに合わせて、幅広いジャンルの技法を教えてくれる。
http://www.ekodatoubou.com/
西村真一郎

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