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15年後、妻とこの茶碗で抹茶を飲みたいと思った――そんな展覧会でした

虎ノ門で味わう「志野茶碗」

連載 ZIEL museum 2021.1.27

取材・文:金丸信丈
撮影協力:菊池寛実記念 智美術館
撮影:編集部

美術館に足を運ばないようになって、もう10年くらい経つでしょうか。仕事にかまけ、たまの休日も外出がおっくうになってしまったZIEL編集長の金丸です。
2020年12月12日(土)から菊池寛実記念 智美術館で開催されている、「鈴木藏の志野 造化にしたがひて、四時を友とす」に、編集部・出口と一緒に行ってきました。
詳細な展覧会ガイドは出口に譲るとして、本稿は芸術に疎いガサツなオヤジの美術館の楽しみ方としてご参考いただければと思います。

 

虎ノ門を歩いていると突然現れる非日常の空間

企業の取材などでしばしば訪れる東京都港区の虎ノ門。個人的には重厚かつ洗練されたビルが建ち並ぶイメージが強い街で、プライベートで訪れることはまったくない。
虎ノ門ヒルズ駅という、これまた大げさなまでにおしゃれな地下鉄の駅に降り立ち、少しげんなりする。ガサツな男にとっては、少々場違いな駅だ。「いつの間にこんな駅が?」と思って調べると、2020年6月に開業したばかりだという。
駅を出て歩くこと十数分ほど、「ここですね」と編集部・出口に示されて、あらためて戸惑う。

最寄り駅は、日比谷線神谷町駅です。徒歩6分ほど

高層ビルを背景に、突如現れた(ように感じた)落ち着いた佇まいの菊池寛実記念 智美術館。子どもみたいなことを言うようだが、「瓦」を久しぶりに見たような気がする。思い返せば、私が住む千葉市では瓦屋根の家を見なくなった。

2枚も写真を載せるほどの変化はないと思われる人が大半だろう。それは重々承知のうえだ。
入り口から歩を進め、近づいてくる2つの建物と背景の高層ビルとのギャップに少しドキッとしたので、私のそのときの感覚をみなさんにお伝えしたく、あえて2枚、載せてみた次第である。
ただし、ドキッとしたのも束の間、背景に見える高層ビルとのギャップに慣れた後――私は迂闊にも思ってしまった。「なにやら小さくない?」と……。

地下に降りていく階段

「意外と小さい美術館だね」――そんなバカ台詞を同行した編集部・出口に言わなかったことに心底ホッとした。
それはまったくの杞憂であった。
安心してほしい。空間が地下に続いていく。誰の共感も得られない杞憂だろうが、念のために申し添えておく。
写真は、入館時にはドギマギして撮影を忘れていたため、帰り際に撮影したもの。なので、下から上を見上げるかたちで撮影している……。美しい曲線を描きながら降りていくその階段は、これから始まる非日常的な空間の序章としてふさわしい。

展示物を見る前からドギマギしてばかりの田舎者だが、ここに来て、三度(みたび)ドギマギすることになる。

館内の展示の様子

展示された部屋に足を踏み入れて、私は心のなかでつぶやく。
「素敵な佇まいだな」
……というのは、嘘だ。周囲には落ち着いた顔を見せながら、私は心のなかではしゃいでいた。
めっちゃくちゃかっこいいじゃん!!
当然ながら、口に出しては言えない。隣にいる編集部・出口と私は20も歳が違う。バカだと思われる。
はしゃぐと同時に緊張して、特に感想を口にすることはなかった。
出口と二手に分かれて、それぞれ茶碗に見入った。

「志野茶碗」

厳かに並ぶ志野茶碗を、ひとつずつ見ていく。
ゴツゴツした手触りを連想させながらも、どこかやわらかさを感じる。重そうだが、やさしい印象を受ける。
テーブルにこうした器が並んでいたら、日々の生活で過ぎていく時間もまた違ったものになるのだろう。この茶碗をもつ妻の様子を思い浮かべて、ひとり悦に入る。

「志埜大皿」

この大皿には、ぜひ刺身をのせたいところだ。
水族館を訪れた中高年が「この魚、旨そう」と言いながら水槽の中の魚を見て回るように、私は「この食器で食べたら旨そうなもの」という目で食器たちを見て回っていた

「志野香炉」

館内で歩みを進めると、香炉が目に入った。燃え盛る炎を表現したであろう上部の造形は、あたたかな温度を感じる一方で、ここでも私はそう表現せざるを得ないわけだが、「かっこいい!」の一言に尽きる

この記事をご覧のみなさんには、ぜひ旦那さんを誘って、菊池寛実記念 智美術館に足を運んでいただきたい。
おそらく旦那さんは、瓦屋根が見えてくるくらいのタイミングから口数が減るだろう。そこで、「美術館なんて縁がない人だから」などと考えてしまっては早計だ。口数が減った理由は退屈だからではない。ドギマギしているのだ。
現代志野を代表する陶芸家、人間国宝の鈴木 藏の茶碗をはじめとした作品に触発された旦那さんは、帰り際、無言ではいられない。「食器を買って帰ろうか」などと言い出すはずだ。
鈴木の作品は買えないまでも、せめて、という気持ちを込めて。

その日の夕飯は買ったばかりの食器を並べて、どうか素敵な時間を――

鈴木 藏の表現豊かで独特の存在感をもつ作品についての詳細は、こちらをご参照ください。

 

旦那さんと一緒に展覧会に足を運ばれた方、展覧会の感想や記事の感想、そして夕飯の様子についてご報告をお待ちしています!
新型コロナ予防には重々お気をつけてお出かけください。

展覧会情報
鈴木藏の志野 造化にしたがひて、四時を友とす

会場:菊池寛実記念 智美術館
会期:2020年12月12日(土)~2021年3月21日(日)
観覧料:1100円
開館時間:11:00~18:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
最寄り駅:神谷町駅、六本木一丁目駅、溜池山王駅、虎ノ門駅
HP: https://www.musee-tomo.or.jp/exhibition/

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