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10分でわかる! 「自費出版」のしくみとカラクリ

そもそも「自費出版」とは何をしてくれるサービスなのか?

連載 本の書き方、つくり方 2021.3.25

文:金丸信丈

本を出したい――。そう思ったときに頭に浮かぶ「自費出版」という言葉。そもそも、自費出版とは何なのか、本屋に並ぶ本とどう違うのか。
出版業界に身を置いて20年目となる金丸が、みなさんの疑問を10分で解消したいと思います。

 

出版というのは、国内の数ある商品のなかでも流通が少々特殊といえる商品です。この「流通」のしくみを知れば「出版」とはなにか、そして「自費出版」とは何かを知ることができます

流通というと少々言葉が固いですが、要するに、つくられた商品がどのようにして、みなさんの手元に届くのか、ということです。

書籍であれば、出版社から発刊された本がどのように書店に並び、読者の手元に行き渡るのか。

おおざっぱに言うと……

①出版社が本をつくる

 

本をつくっている会社というと、当然ながら出版社が思い浮かびますね。ほかにも、編集プロダクションという形態の会社が、出版社から依頼を受けて本をつくっています(私は、この編集プロダクションに在籍しています)。映画やテレビに、それを専門につくる制作会社があるように、出版にも制作会社があるわけです。私の会社では、複数の出版社の本を制作しています。どのような本をつくっているかは、こちらでご覧いただけます。

 

②出版社が本の印刷データを印刷会社に渡す

 

印刷データを受け取った印刷会社は、印刷・製本作業を行います。また、書籍には、「ISBN」と呼ばれる書店流通に必要な番号がつけられます(裏表紙にバーコードとともについている番号ですね)。ちなみに、雑誌はISBNではなく「雑誌コード」という別のものがつけられます。

 

③印刷製本された本が、取次に納品される

 

「本」として商品ができあがると、問屋に納品されます。出版業界において、他の業界でいう問屋機能を果たすのが出版取次会社です。業界内では単に「取次」と呼ばれます。
大手どころでは、日販(日本出版販売)、トーハンといった企業が挙げられます。この2社で、書籍流通の7割以上を占めるといわれています。

 

④取次から書店に本が配送される

 

本の値段は、どこで買っても同じですよね。これは、日本の書籍販売で採用されている「再販制度(再販売価格維持制度)」によるものです。
この書店の再販制度について詳細をお話すると、おそろしく長い時間をみなさんから頂戴することになるので、思い切って一言でいうと「『定価』で『安定』して流通するための制度」です。
この制度のために、ほかの業界の問屋と少々異なる「取次」という会社があるわけです。

 

⑤書店を訪れた人が「この本おもしろそう!」と思って買う

 

要するに、出版社から印刷会社、取次を経て、本屋に届き、そこに並んだ本がみなさんの手に渡る、というしくみですね。

 

⑥ちなみに……

 

Amazonは上記で説明した取次を経ていません。出版社、印刷会社を経て、直接Amazonに納品され、みなさんが「カートに入れる」をクリックしたら、その数日後に手元に本が届きます。

 

本の流通について、あくまで「おおざっぱ」にお話しました。
おおざっぱに説明したついでにおおざっぱに付け加えると、本を発刊する=取次に本が納品するということなわけです

ただし、取次に数百冊の本を持ち込んで「この本を書店に配って!」とお願いしても、受け入れてはもらえません。取次に納品するためには、取次会社に口座をもっている必要があります。この口座は、誰でも彼でも開けるものではありません。逆にいえば、この口座をもってさえいれば「出版社」として本をつくり、売れるわけです。事実、社員が2~3人の出版社というのは、そこそこあったりします。

といわけで、結論です。

世にいう「自費出版」というのは……

取次に口座をもっている会社=出版社が、著者(作者)から費用をもらって、著者が書いた本(原稿)を上記で説明した流通に乗せるサービス

なのです。

 

本を出したいと思うと、「自費出版」という言葉が頭に浮かぶ人も多いでしょう。そこであらためて自分が本を書きたい、出したい理由を考えてみてください。上記のサービスを必要としているのか――。

私は編集者ですから、「自分の本を本屋に並べたい」という思いを否定することはできません。本屋で自分が手掛けた本が並んでいるのを見ると、なにものにも代えがたい満足感があります

まだ若かったころ、一度だけ「張り込み」をしたことがあります。自分が手掛けた本がそこそこ目立つところに並べられていたのを見かけ、「もしかしたら……」と思い、すぐ近くで20分ほど観察しました。お客さんが手にとって、立ち読みして……3分ほど後、本棚に戻す。ああ……残念……無念……。レジに向かったら、声をかけよう(なんだ、こいつは⁉ と思われてもいい!)と決意していたのですが(笑)。でも、立ち読みしてもらっただけでも、なんというか……うれしかったですね。

ですが、本に与えられた使命はそれだけではないだろう、と最近思ったりもしています。

自伝を書こう――。
そう思われたら、下記の記事も参考にしてもらえると、うれしいです。

▼本の書き方、つくり方
▼「自伝」の書き方 長い人生を本にまとめるために、まず行うべきこと
▼「原稿」を書くときに気をつけたい5つのポイント 原稿執筆歴5年目の編集部・出口がお届け

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