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結局のところ「終活」って何?(前編)

日本葬祭アカデミー教務研究室・二村祐輔×ZIEL編集部・花塚水結

特集 自分をあたらしくする 2020.7.17

文・構成:花塚水結

テレビや雑誌など、さまざまなメディアで取り上げられる「終活」。よく耳にはするし、「自分や親の死後のこと」について考えておかなきゃなとも思う。
これからの人生について考えておくべきことって、病気になったときのこと、介護が必要になったときのこと、認知症になったときのこと、お墓のこと……。え、もしかしてこれ全部終活? 自分にもあてはまるの? どうやって決めればいいんだろう? 決めるだけでいいのかな? いや、そもそも、終活って何?

……考えてもわからなかったので、終活に詳しい人に聞いてみることに。行政主催の葬祭セミナーを多く受け持っている、日本葬祭アカデミー教務研究室の二村祐輔さんが丁寧に教えてくださいました。

 

「終活」は将来の不安を解消して自分の「死」と向き合うこと

花塚:早速ですが「終活」とは、何ですか?

二村:流行語ですよ。

花塚:(確かにそうなんだけど……)2010年に流行語大賞にノミネートされて、世間からの認知も広まったんですよね。実際にはどんなことをするんだろう? と思いまして。

二村:そうですね、そのくらいから流行り始めました。「終活」は「就活」や「婚活」などにあやかってできたカジュアルな言葉だと思いますけど、実はそれほどお気軽なものではないんですよ。

花塚:思っているほど甘くないぞ、ということですか?

二村:そうです。

花塚:なるほど……。では、甘くない「終活」についてお聞ききしたいのですが、そもそも一般的に、みなさんは終活に際して、どんなことを考えているんですか?

二村:おそらく、「どうやって老後をよりよく生きていくか」を第一に考えていのではないでしょうか。介護状態や認知症になったときを心配して、先手を打っておきたいな、と考えている人が多いです。

花塚:たしかに……。私の年代でも自分がそのような状態になるのは心配です。

二村:それから医療のこと。現代は医療の進歩により、延命治療や終末医療が発達していますから、それらの選択についてです。
家族からすれば1秒でも長く生きていてほしいという願いから延命治療を望む人も多いでしょうが、本人にとっては大きな苦痛をともなう場合もあります。ですから、延命治療は最善の選択なのか考えておくべきですよね。病床で寝ているだけなら生存できうる現代において、「価値のある生き方」について考える人も出てきています。

花塚:選択肢が増えたからこその問題ですね。

二村:はい。あとは自分のお葬式やお墓がどうなるのか、考える人もいます。こうした問題に対して相対的に不安を感じている人が、今終活をしている人たちだと思います。

花塚:たしかに、将来に不安があると何かしらの対策はしておきたいという気持ちになりますね。

二村:ある程度年齢を重ねると、「あ、この先50年も生きてはいられないな」と思うようになるんです。こうした思いが不安を強くさせていると思います。ただ、こうした不安をひとつでも解消できると自分の死に対しての覚悟――つまり、心づもりができるんですよね

花塚:不安解消が安心へと変わって、それが心づもりにつながる、というわけですね。

二村:はい。そして、心づもりができると死までの余生を有意義なものにできるんです。だから、私が講師を務めるお葬式やお墓のセミナーに来てくれる人たちは、今後の人生を有意義な時間にしたいと考えている人が多いです。

花塚:セミナー参加者は前向きな気持ちの人が多いんですね。

二村:ただ、最近は「自分のことで家族に負担をかけたくない」と、きわめて遠慮がちに考えて終活している人が多く見受けられますね。

 

不明・不信・不安を紐解いて安心につなげる

花塚:最近そのように考える人が増えたということですか?

二村:そう感じます。今終活を行っている70代〜80代の人たちは、子どものころに戦後の時代を生きてきた一方で、バブル期の景気のよい時代から現在のような不況の時代も生きているんですよね。こうした時代の移ろいのなかで苦労を経験してきたことが、「人に迷惑をかけたくない」という思いとして表れているのだと思います。

花塚:漠然とした不安に対して、どのような対策をすれば安心感が得られますか?

二村:まずは何に対して不安を抱いているのかを明確にすることですね。
何をすればよいのかよくわからないという「不明」、死後の世界の存在への「不信」、こうした不明や不信な事柄に対してお金がかかることへの「不満」。この3つを順番に紐解いていきます。

花塚:まず「不明」を紐解くためには、これからの人生でどんなことが必要かを知るところから始めたほうがよさそうですね。具体的にどんなことが考えられますか?

二村:人によってそれぞれだと思いますが、医療や介護、お葬式、お墓、相続……。

花塚:(けっこう多いな……)なるほど。こうしたリスクはどんな対策をするんですか?

二村:ほとんどは実務的なことで解決できると思います。延命治療を希望するならエンディングノートに書いておくとか、相続が不安なら生前贈与をしておくとか。リスクに関して具体的な悩みが出てくれば解決はしやすいですね。

花塚:実務的な解決方法はたくさんありそうですね。
「不信」とはどのようなことでしょうか?

二村:これがなかなかむずかしい問題ですが……。
たとえば、お葬式は何のために行うと思いますか?

花塚:えっと……亡くなった人のために……ですか?

二村:それもありますが、お葬式に参列する自分のためでもあったんですよ。

花塚:え、自分のためですか?

二村:はい。昔の人たちは、魂の存在を当然のこととして、習俗や仏教的な作法で対応することで、手を差し伸べてきたんです。こうした対応をしないと、「さわり」や「たたり」などが起きるのではないかと、怖れていました。
ですから人が亡くなったときには「鎮魂」という儀礼を遺体や遺骨に施し、その後もきちんと魂を祀っていくことで、日々の安心を得ていたのです。
そのために、お金や労力をかけるだけでなく、公の行事として地域ぐるみで協力し、お葬式が行われていました。

花塚:たたり……。幽霊とか怖いですしね……。

二村:亡くなった人を粗末に扱うと、怨霊となって害をなすと信じられていましたからね。地域の人たちの協力により、葬送の慣例や意味には「社会的な役割」があると、世代をつないで伝えてきました。
結局、それは村と家の繁栄に結びつく大切な慣習だったのです。強いては自分自身の安心のためなんですよね。

花塚:お葬式って、亡くなった人の魂を鎮めていくのだと思っていましたが、同時に参列する人の気持ちを治めていく役割もあるんですね。

二村:そうです。お葬式の意味がわかると、人が集まって儀式をすることへの「不信」はなくなると思います。それと同時に、お金をかけることへの「不満」も消えますよね。

花塚:たしかに! 何でお葬式を行うのかがわかれば、「きちんとお金を支払わなきゃ」と思います。

二村ただ形式的にお葬式を行えばいいということではなくて、「なんのために」という意味を知ったうえで、無駄な出費を抑え、お葬式の選択をしてほしいんです。これが実務的に重要だと思います。

 

 

後編はこちら

  1. […] とした不安や悩みを明確にすることで、問題を解決したり、対策を講じることで安心感を得ればよいと教わりました。後編では、具体的な終活の内容を聞いていきます。前編はこちらから […]

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二村祐輔

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表。1953年生まれ。葬祭実務に約18年間従事した後、1996年に葬祭の専門コンサルタントとして独立。同時に「日本葬祭アカデミー教務研究室」を主宰し、「葬祭カウンセラー」の養成と認定を行っている。著書・監修書など多数。 https://www.jf-aa.jp/
二村祐輔