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60歳、自分の甘やかし方——心理カウンセラー・佐藤まゆみ

植えた球根から芽が出ていると心が踊る

特集 冬に感じたい、甘い日々 2021.2.01

取材・文:花塚水結

日々の仕事や家事などに追われて「疲れたなぁ……」と感じるとき、ちゃんと自分を甘やかせていますか?

人生の経験を積んでいくうえで、いつの間にか何かを我慢したり、生きづらさを感じてしまっていたり——。そんな生活をしているうちに、自分を甘やかす方法がわからなくなってしまったという方にこそ、ときにはうんと自分を甘やかしてほしいのです。
そこで今回は、53歳から心理学を勉強し、63歳の今、カウンセリングサービス所属の心理カウンセラーとして活躍されている佐藤まゆみさんにお話を伺いました。ZIELを読んでくださっているみなさんと同世代の方が、どのように自分を甘やかしているのか、また、自分を甘やかすコツを教えていただきました。

 

疲れているときは大好きなガーデニングをする

花塚:佐藤さんは心理カウンセラーとして日々ご活躍されていますが、「今日はくたびれたなぁ」と感じるとき、どのようにして自分を甘やかしたり、セリフトリートメントを行っていますか?

佐藤:くたびれたときには、自分の好きなことをしているときが一番心癒されます

花塚:どんなことがお好きなんでしょうか?

佐藤:私は花や映画、温泉が大好きです。
特に花が好きで、よく花屋で季節の花を買って飾ったり、家の庭でガーデニングをします。今の季節は寒いので外に出て花のお世話をすることも減りましたが、植えた球根から芽が出たりすると心が躍るんですよ。ですから、くたびれたときこそ植え替え作業や土を触って癒されていますね

季節の花を育てるのが好きだと語る佐藤さん。ほかにも、ユリやキンモクセイの香りに心癒されるのが好きだと言う

花塚:休むことよりも、好きなことを優先するのですね。

佐藤:そうです。人間は1つの感情を感じているときに、ほかの感情を感じることはできないんです。たとえば、「ありがたいな」「うれしいな」などと思っているときに、誰かの失態を怒る気持ちにはなれないんですよね。気持ちがモヤモヤしているときは常に雑念を感じている状態なので、好きなことをしてポジティブな感情を感じるんです。好きなことに集中してしまえば、忘れられますから。
花塚さんの好きなことはなんですか?

花塚:アイドルが好きですね。昨今の情勢によってライブに行くことはできなくなってしまいましたが、曲を聞いたり動画を観て元気をもらっています。

佐藤:では、今からその好きなアイドルについて考えないでください。

花塚:え!?

佐藤:今好きなアイドルが頭に浮かんでいますよね?

花塚:はい、浮かんできました。

佐藤:今、考えちゃダメって言ったじゃないですか(笑)。
……というのは冗談で、そもそも脳は否定形を認識できません。「○○しないで」と言われると、自然と「○○」の部分を考えてしまうんです。

花塚:(よかった……!)

佐藤:ですから、「嫌なことは考えないようにしよう」とするのではなく、「好きなこと、したいことをしよう」と考えることが大事なんです。「嫌なことは考えない」と考えれば考えるほど、嫌なことが頭に思い浮かぶわけですから。モヤモヤしているときこそ積極的に好きなものに触れています。

佐藤まゆみさん(左)、編集部・花塚(右)。オンラインで取材させていただきました

 

映画はミニシアターで過去の名作を鑑賞する

花塚:映画もお好きだということですが、どんな映画を観ますか?

佐藤:心があたたかくなるような邦画が好きですね。それも、封切りの新作ではなくて、近所のミニシアターで過去の名作を鑑賞するのが好きなんです。1日を映画鑑賞にあてることもあって、先日は寅さんを観に行ってきましたよ。

花塚:まさに名作ですね! 過去の作品なら家で鑑賞することもできると思いますが、ミニシアターに行くことがこだわりなのでしょうか?

佐藤:はい。家だと、途中で宅急便が来たり用事ができたりして、映画鑑賞が中断してしまうことがあるじゃないですか。映画は集中して鑑賞したいので、必ず映画館に足を運んで観ています。

花塚:映画館はしっかり換気がなされている場所ですから、コロナ禍でも比較的行きやすい場所の1つですしね。

佐藤:そうなんです。特に映画館のような娯楽施設はお客さんが減ってしまっているため、スタッフの方がさまざまな工夫をしているのを見かけます。この前は映写室を見学させてもらえて、とても感動したんです。だから、足を運ぶことで少しでも応援できればいいなという思いもあります。

映写室の見学では、今ではほとんど使われていない35mmフィルムを回す機械と、現在使われているデジタルの機械の両方を見たと話す佐藤さん

花塚:映写室ですか。この時期にふさわしいサービスだったかもしれませんね。
この1年ほどは先行きが見えない世情が続いていますが、それによって変化したセルフトリートメント方法はありますか?

佐藤人と触れ合うことができなくなったことに対してストレスを感じていましたが、今日の取材のようにオンラインのよさを知りました。オンラインなら、家にいながら誰とでも話せるので、友達同士集まっておしゃべりしたり、離れて暮らす姪やその子どもとコミュニケーションが取ったりして、楽しんでいます。
本当は会って握手やハグを交わしたい気持ちもありますが、それはもう少し我慢が必要ですね。

 

レストランでは何百円の差で注文するメニューを決めない

花塚:これまでの人生のなかで、ライフスタイルも変化してきたのではないかなと思うのですが、それに合わせて変化したセルフトリートメント方法はありますか?

佐藤:心理学の勉強をし始めたのは今から10年前の53歳のときだったので、それまでは「自分を甘やかす」ことを知りませんでした。ストレスが溜まったらなんとなく友達に話すけど、核の部分は言えないこともあって……。思い返せば、なかなか浄化できない日々が続いていたと思います。
でも、今はたくさん勉強をしたうえで、自分を “お客さま扱い” するのが大事だなと思っています

花塚:50歳を過ぎてから新たに挑戦したことだったのですね!
それで、自分を “お客さま扱い” するというと……?

佐藤:たとえば、普段来客があったときに出しているティーカップにコーヒーを入れて飲んでみる。それから、よそ行きの服を何でもない日に着てみる。とても小さなことですが、この小さな変化をどこか特別に感じませんか?

花塚:わかります! 好きな洋服を着ると気分が上がりますよね。

佐藤:でしょう。それから、外食では本当に食べたいものを注文します

花塚:食べたいものを注文するのはあたり前なような気もしますが、どういうことでしょうか?

佐藤:たとえば、レストランに行って「パスタにしようか、それともハンバーグにしようか」と考えていると、結局最後は値段が決め手になることありませんか?

佐藤さんは心理学の勉強をして自分を “お客さま扱い” することの大切さに気づき、値段ではなく自分が食べたいものを選択するようになったと話す

花塚:あります……!

佐藤:でもそれって、本当に自分が食べたいものとは少し違かったりするんですよね。とは言っても料金が高いお店には行けないし……。ほんの何百円の差だったりするんですけどね(笑)

花塚:たしかに、私も「食べたいもの」のなかで、「一番安いメニュー」を選んでしまっていますね。

佐藤:自分を “お客さま扱い” すると言っても、本当に小さなことなんです。でも、これが習慣化されると「自分は大切に扱われるのにふさわしい存在なんだ」という思いが無意識に取り込まれていきます。そうすることによって、だんだんと自分を大切にできます。

私自身もそうでしたが、特に、私たち60歳以上の世代は「結婚しなさい」「結婚したら専業主婦になりなさい」などと縛られ、厳しくされてきたので「自分を甘やかす」ことを知らない方や苦手な方が多いと思うんです。
だから、自分でも気づかないうちに小さなことを日常的に我慢していることが多いと思いますし、そうした小さなことが積もって山となり、ふとした拍子にドロドロと溢れ出てきてしまうこともあります。

花塚:日常の小さな変化も起こしにくい方もいらっしゃるかもしれませんね。

佐藤:はい。そのような方は、まず自分が何を我慢しているのか、自分で気づいて認めることからはじめてみてほしいです。人間は自分の感情を受け入れてはじめて解放できるので、モヤモヤしていては心から笑顔になれません。ものだけでは満たされないので、物事の根本的な考え方を変えられれば楽になっていくと思います。
それから、ときには人に頼ってしまうことも有効な方法です。

花塚:なるほど。たとえば、佐藤さん自身が何か人に頼っていることはありますか?

佐藤:私は現在、95歳の母と2人で暮らしているのですが、洗濯だけは母にお願いしています。「高齢の母親に任せるなんて」などと言われてしまうかもしれませんが、母は洗濯が好きでやりたいことなんですよね。

佐藤さんの母・喜美子さんは汚れたものがきれいになる達成感が好きなんだそう

佐藤:高齢の家族と暮らしていると、「すべて自分がやらなきゃいけない」と背負い込んでしまう方も多くいますが、自分の負担が増えるだけです。「人に頼る」ことが苦手な人もいるかもしれませんが、自分が苦手なことを得意とする人がまわりにいれば、それはやってもらえばいいと思いますよ。自分の負担も減るし、相手も好きなことができるわけですから。

歳を重ねて経験を積んできた分、ものの見方や考え方は1つに凝り固まりがち。それがいいか悪いかは置いておいて、1つしか答えがないと思うと、解決の糸口が見つからなくなってしまいます。常にほかの考え方はないかなと探したり、人に話して自分では見つけられなかった答えのヒントをもらったりするのもいいでしょう。「自分の負担を減らす」という「甘やかし方」もあると思います

みなさんはどのようにして自分を甘やかしていますか? コメント欄で教えてください。

 

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佐藤まゆみ

カウンセリングサービス所属心理カウンセラー。兵庫県神戸市在住。
1957年生まれのシニア世代。 自身の豊富な人生経験を生かした、自分らしく生きていくためのサポートが好評を得る。 得意ジャンルは、対人関係・自己啓発・パートナーシップ。 “何かを始めるのに遅すぎることはない”の言葉通り、いくつになっても新しい人生を切り開いていけることを、身をもって実践している。 https://www.counselingservice.jp/
佐藤まゆみ

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