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抱えた傷を愛に変えて生きた女優──『オードリー・ヘプバーン』

活躍の裏側に迫るドキュメンタリー映画

連載 スクリーンZIEL 2022.5.11

文:花塚水結

編集部・花塚が今観たい映画作品を紹介する連載「気になるシーンをコマ送り スクリーンZIEL」。第16回目は、2022年5月6日(金)に公開された『オードリー・ヘプバーン』です。

世界的に有名なイギリスの女優、オードリー・ヘプバーン。華々しい活躍の裏では、幼少期に戦争や父親からの裏切りを経験し、深い傷を負い、悲しみを抱えながら生きていました。そんなオードリーの人生を描いたドキュメンタリー映画をご紹介します。

サムネイル:©️PictureLux / The Hollywood Archive / Alamy Stock Photo

 

世界中から愛された女優は、愛を求めて生きていた

 

本作は、ハリウッドスターであるオードリー・ヘプバーンをよく知る近親者や友人たちが、1人の人間としてのオードリーを語るドキュメンタリー映画です。時折、生前のオードリーのインタビュー音源も混じえ、どんな思いを抱えて表舞台に立ち続けていたのかを描いています。

「女優オードリー・ヘプバーン」と聞いて思い浮かべるのは、少女のような愛らしさと大人の女性のようなキリッとした気品を兼ね備えた顔立ち、抜群のスタイル、チャーミングな笑顔。そして、何年経っても色褪せない名作映画への出演などの輝かしい活躍の数々。

1953年には映画『ローマの休日』に主役に抜擢され、翌年には24歳という若さでアカデミー賞®️を受賞。以来、『麗しのサブリナ』『ティファニーで朝食を』『マイ・フェアレディ』など数々の名作に出演し、世界中から愛されるハリウッドスターになりました。

ハリウッド黄金期を代表するオードリーですが、女優として絶頂期とも言える1967年、38歳で仕事より家族を優先し、そこから約10年もの間、表舞台から遠ざかってしまいます。晩年は名声を活かしてユニセフの親善大使として精力的な活動に励みますが、一体、その影にはどんな思いが隠されていたのでしょうか──。

©John Isaac

 

幼少期のつらい経験

 

オードリーが仕事より家族を優先した理由は、自身の過去の経験によるものでした

1929年5月4日、ベルギーの首都ブリュッセルに生まれたオードリー。両親はともに貴族の出身で、5歳ごろからバレエを習っていました。しかし、父親は過激なナチスの信者となり、1935年には家族を捨てて出ていってしまいます。

その4年後、10歳となったオードリーは第二次世界大戦を経験します。一時はドイツ軍が占領していたオランダのアーネムで過ごしていたこともあり、食料が尽きていく様を肌で実感し、とてもつらかったと語る場面もありました。

母親と暮らしていたオードリーでしたが、その母親からも言葉の暴力を受け、自分自身を醜い存在だと思い込んでしまったのです。こうした幼少期の経験によってオードリーは深く傷つき、のちの人生でもその傷を抱えて生きていくのでした。

やがて2度の結婚を経験し、2人の子どもを出産したオードリーは、自分が経験してきたような、さみしい思いを子どもにさせたくないという強い意思で女優業から遠ざかる決意をしたのです

表舞台から身を引いてから約10年後の1976年には女優への復帰も果たしますが、1988年にユニセフの親善大使に就任してからはその活動に精力的に参加し、世界中の子どもたちに愛を与える存在となりました。

幼少期に経験した戦争やそれに伴う貧困、家族関係のトラウマ。自身の経験と同じような境遇で苦しんだり、さまざまな事情を抱えて生きる子どもたちすべてをやさしく愛で包み、世界中にも現状を訴えていく。そこには映画で見せる笑顔からは到底想像もできないほど、強く生きる1人の人間としてのオードリー・ヘプバーンが存在しました

 

このシーンが気になった!

 

女優としてスターへの道を駆け上がり、愛する人と結婚し、子どもにも恵まれたオードリー。それでも父親に捨てられた傷は癒えないままでしたが、あるときオードリーは父親と再会することを決意します

1960年代の半ば、当時のパートナーであったメル・ファーラーの尽力によって、アイルランドで暮らしていた父親と再会することができました。

©Sean Hepburn Ferrer

オードリーは父親との再会をよろこんだものの、父親の反応は冷たかったそう。それでもオードリーは父親を許し、父親が亡くなるまでの約20年もの間、経済的にサポートを続けたそうです。

自由な身となり活躍し続けていたオードリーが、自身のトラウマと懸命に向き合う──。そんなオードリー・ヘプバーンという人間にグッと惹かれました。

「女優」と聞くと、どこかで「まわりからはちやほやされて、いい人生を歩んできたのかな」なんて思ってしまいそうになります。それはきっと「女優」という側面しか観ていないのだな、と痛感させられました。

オードリーの出演作を観たことがあるという方も、観たことがない方も、本作を観れば「オードリー・ヘプバーン」という人を大好きになると思います。彼女の人生を、どうか劇場で観てみてはいかがでしょうか。

 

作品情報
『オードリー・ヘプバーン』
公開日:2022年5月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamura ル・シネマほか、全国ロードショー
監督:ヘレナ・コーン
出演:オードリー・ヘプバーン、ショーン・ヘプバーン・ファーラー、エマ・キャスリーン・ヘプバーン・ファーラー、クレア・ワイト・ケラーほか
公式サイト: https://audrey-cinema.com/

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