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今、読みたい! 中山七里『ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人』

安楽死は正義か、悪か

連載 ZIEL編集部が選ぶ 今、読みたい本 2021.1.30

文:出口夢々

編集部・出口が、ZIEL読者のみなさんに今、読んでいただきたい本を紹介する連載「ZIEL編集部が選ぶ 今、読みたい本」。毎月の特集テーマと関連のある内容の本を選び、紹介していきます。
第4回目に紹介するのは、2019年2月23日に発売された中山七里の『ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人』。1月の特集テーマ「今こそ、死の話をしよう」で公開した記事「安楽死の問題から考える『死を選ぶ権利』」に関連して、安楽死をもたらす医師をめぐる医療ミステリー作品を紹介します。

 

犯罪と安楽死問題を追う、医療ミステリー

ある日、警察に1本の電話がかかってきました。電話の声の主は小学生低学年と思われる男の子。「悪いお医者さんがきて、お父さんを殺してしまったから逮捕してほしい」と言うのです。警察は男の子のいたずらか妄想だと疑いますが、念のため男の子の家に行き、事情聴取を行うことになりました。

捜査一課の高千穂明日香と犬養隼人が男の子のもとに向かうと、男の子の父、馬籠健一の葬儀の真っ最中。そこで男の子、馬籠大地と、男の子の母、馬籠小枝子から別々に話を聞くと、2人の話は食い違っていると判明します。大地は、時間差で2人の医師が家を訪れ、1人目の医師が訪れた直後に父親の体調が急変し、亡くなったと言うのです。しかし、そんなことは微塵も話さなかった小枝子。それに違和感を覚えた高千穂と犬養は至急、葬儀を取り止めさせ、事件を調べ始めます。

捜査を開始した犬養は、小枝子が「ドクター・デス」を名乗る人物が開設するサイトにアクセスしていたことを突き止めます。ドクター・デスは、安らかで苦痛のない死——「安楽死」を20万円で提供すると謳っているのです

ドクター・デスは一体何者なのか、家族や本人が「死を選ぶ権利」はなぜないのか、犯罪と安楽死の問題をめぐるストーリーが展開されます!

ドクター・デスの正体は何者なのか、本来人を救う役割である医師が、なぜ人殺しに手を染めるようになったのか——さまざまな問いが頭のなかで渦巻きながらも、次々と発生する事件を前にページをめくる手が止まりませんでした。その傍らで、ずっと頭を離れないのは「なぜ私たちには死を選ぶ権利はないのか」という疑問です

ドクター・デスに安楽死を依頼する理由は人さまざま。ですが、彼らには「家族を/自分を、苦痛から解放させたい」という思いが共通しています。家計を圧迫するほどの高額な医療費、厳しい治療を乗り越えるために必要な精神力、それらは病人とその家族の心を蝕み、いつしか生きていることが負担になっていきます。そのような状態でも、安らかな死を選ぶことはなぜ許されないのか——。犯人と犯行の動機が判明した後でもなお、この問いは私の頭のなかで渦巻いていました。

書籍情報
中山七里『ドクター・デスの遺産 刑事犬養隼人』(KADOKAWA/角川文庫)
定価:640円(+税)
発売日:2019年2月23日
ISBN:9784041077948

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