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臨死体験って本当にあるの?

科学者・安斎育郎先生に聞いた!「科学的に『生まれ変わり』はある」

特集 今こそ、死の話をしよう 2021.1.11

取材・文:花塚水結

「死」とは人生でたった一度しか経験できない事象です。ですから、誰もが経験から「死」について語ることはできません。ですが、「臨死体験」によってある意味「死」を体験したという報告もあります。
一体、臨死体験とは何なのでしょうか。実際に臨死体験に似た経験を持つ立命館大学名誉教授で科学者の安斎育郎さんにお話を伺いました。

 

臨死体験は身体の機能が落ち込んだときに現れる現象

花塚:安斎さんは臨死体験に似たような経験をされたそうですが。

安斎:はい。体験したのは1978年、私が38歳のときです。
当時、国連の第1回軍縮特別総会がニューヨークで開催されていたのですが、日本で平和や非核三原則の問題に取り組んでいる市民団体502人がその総会に参加したんです。私はそのとき役員の1人としてニューヨークで10日ほど過ごしました。
国連で議論された内容を聞いて、新聞にまとめて、市民団体が滞在している各ホテルに配る役割を担っていましたが、5日間で寝たのは13時間程度。1日2〜3時間ほどしか眠れない激務でした

ある日、朝刊を配る手配を終えてホテル部屋に戻ったとき、疲れ果ててベッドに斜めになるように倒れてしまったのです。「寝ている場合じゃない、起きて仕事しなきゃいけないんだ」と頭では思っていても、身体は限界を超えていました。すると、倒れている自分を斜め上から見下ろしている自分がいたんです。ベッドに斜めに寝ている自分の映像を今でも鮮明に覚えています。

花塚:幽体離脱に近い感覚だったのでしょうか?

安斎:そうですね。「客観的な視点から自分を見ていた」ということを考えると、幽体離脱のようでした。ただ、「意識はあって頭は働いていたにもかかわらず、自分の身体が動かなかった」ことを考えると、金縛りに近い状態だったと思います。
1時間して身体が少し回復したところで、同行していた医者に診てもらったら、「あなたの心臓はふるえているだけで、危険な状態です」と言われました。相当危険な状態だったのだと。死の間際まではいかなかったけれど、不思議な体験をするものだなぁと思いました。

花塚:身体が普通の状態であれば、経験しないようなことですもんね。
このような不思議な現象を科学者としてどのように捉えていますか?

安斎:私は脳科学の専門ではありませんが、脳は身体の研究で解明されていないことが多い部分です。しかし、近年、外国の研究も含めて少しずつ明らかになってきていることもあります。

花塚:どんなことがわかっているのでしょうか?

安斎死ぬ間際は肺や心臓の機能が落ちて、脳に供給される血液の酸素濃度が減り、二酸化炭素濃度が増えるのですが、それに近いことが身体で起きると、いわゆる「臨死体験」のような感覚を体験するのではないかという研究発表がされています

花塚:臨死体験は、身体の機能が落ちることによって引き起こされている現象かもしれない、ということなんですね。

 

薬の副作用で幻覚を引き起こす可能性がある

安斎:さらに、幻覚を引き起こす薬がありますが、その薬を飲ませる実験では、薬を飲んだ多くの人が「トンネルの向こう側から光がさしていた」「お花畑が広がっていた」など、同じような映像を見たと言っていたのです。これは、日本をはじめ世界で報告されている臨死体験と同じような現象であるため、臨死体験は一種の幻覚なのではないかとも言われているのです
私が聞く限り、臨死体験をした人たちの多くは「視覚的」な臨死体験をした人だけです。音や匂いを感じた人の話は聞いたことがないんですよね。こうしたことからも、幻覚の一種なのではないかと思っています。

花塚:たしかに、テレビでも「川を渡ろうとした」など視覚的に不思議な体験をしたという人を見たことがあります。

安斎:死の間際は健康状態がよくない人も多いでしょうから、何かしらの薬を服用している場合も多いでしょう。そのため、薬の副作用で幻覚を見ている可能性もありますね。私も睡眠誘導剤を服用してキラキラ輝く光の幻覚を体験したことが複数回あります。私の場合は幻聴や幻臭や幻味も感じました。

花塚:そのときは、どのような感じだったのですか?

安斎:睡眠が不安定になったときに、はじめて市販の睡眠導入剤を飲んでみました。すると、視界のなかで星の光とか花が散りばめられていてきれいだななんて思ったりして。でもその後、何かの音楽が聴こえ始め、どこからか臭いも感じました。通常とは異なる状況に、「これは幻覚だ」と自分でも気がつき、楽しんでいた自分がいました(笑)

花塚:幻覚に加えて音楽や臭いも感じたのですね。病院には行かなかったのですか?

安斎:行きましたが「そんなことはないでしょ」と言われてしまいました(笑)。ですが、こうした実体験もあるので、薬物による副作用として幻覚が見え、それを臨死体験と判断だと思う人がいても不思議はないと感じています。
これからもっと医療が発展して、死の間際から意識を取り戻す人が増えると思うんですよね。そうしたらきっと研究も進んで臨死体験や幻覚などの謎も解明される日が来るかもしれないと思っています。

 

科学的に「生まれ変わり」はある

花塚:ご自身の体験や世界で報告されている死の間際に起こる現象をとおして、安斎さんは死後の世界をどのようにお考えでしょうか?

安斎:正直、亡くなった人に話を聞かない限りはわからないですが、個人的には「死後の世界」はないと思っています。人間は60兆個の細胞が複雑に協力し合って生命を維持しているのですが、生命が維持されるためには酸素やエネルギーの補給が必要です。それが絶たれてしまえば、個の生命体としての機能はすべて失われて何も感じず「無」になると思っています。
でも、ある意味で生まれ変わりはあると確信しているんです。

花塚:なぜ生まれ変わりがあると思われるのでしょうか?

安斎:人間の身体を構成する物質の約18%は炭素原子なのですが、火葬の過程で酸素と結合して二酸化炭素となり、地球上へ放出されます。僕の身体を火葬したとしたら、「安斎育郎ブランドの二酸化炭素」が世界中へ広がっていくわけです。そして世界中の地上10kmまでの大気圏に均一に二酸化炭素が広がったと仮定して、北海道でもニューヨークでも世界中のどこでもいいから1リットルの風船を膨らませると、そのなかに「安斎育郎ブランドの二酸化炭素」が14万個程度入っているという計算になりました。

花塚:目に見えないけれど、安斎さんを構成していた物質が空気中にたくさん存在しているわけですね。

安斎:はい。その二酸化炭素は光合成によって植物や野菜、穀物になるかもしれないし、さらにその食物を誰かが食べれば人間を構成する物質になる。つまり、僕を構成していた物質が再利用されていることになります。だからそのような意味で科学的に「生まれ変わりがある」ことは疑いようがありません

花塚:そう考えると、もしかしたら昔の偉人が今の私たちの身体を構成しているのかもしれないと考えることもできますね。

安斎:はい。私の右手のある部分は徳川家康を構成していた物質が再利用されているかもしれないし、右足のある部分はゲーテを構成していた物質だったかもしれません。「個体の死」は、その人にとっては死であるかもしれないけれど、身体を構成していた物質はその後も生々流転して生き続けます。

とは言っても、今は自分の「死」について考えていません。今僕は80歳ですが、もっと生きることに興味関心や執着があります。ありがたいことにこの歳で仕事を続けさせてもらえているので、職場まで歩いてみたり、季節の移り変わりを感じたりすることが好きなんです。

38歳のときに不思議な体験をして、無茶をすれば死の間際まで行ってしまうかもしれないんだなと思いましたし、そもそも人はいつかは死んでしまいます。でも、人は死ぬときまで生きていますし、生きている限り死にませんよね。だからそれまでは好きなことも仕事も目一杯続けたいと思っています。

「生まれ変わり」について、みなさんはどのような意見をお持ちですか? コメント欄でぜひ聞かせてください。

 

事務所情報
安斎科学・平和事務所
〒603-8577
京都市北区等持院北町56-1
立命館大学国際平和ミュージアム内
電話:075-465-8151
FAX:075-465-789

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安斎育郎

1940年、東京生まれ。東京大学工学部原子力工学科第1期生。工学博士。専門は放射線防護学および平和学。東京大学助手、東京医科大学客員助教授をへて、立命館大学経済学部および国際関係学部教授。現在、名誉教授。国際平和ミュージアム館長をへて、終身名誉館長。
ベトナム政府より文化功労記章、ノグンリ国際平和財団より第4回人権賞、日本平和学会より第4回平和賞などを受賞。2011年に安斎科学・平和事務所を設立して「福島プロジェクト」を立ち上げ、これまでに70回の調査を行う。
著書に、『からだのなかの放射能』、『放射線のやさしい知識』、『福島原発事故』、『科学と非科学の間』、『人はなぜだまされるのか』、『だます心 だまされる心』、『霊はあるか』、『語りつごうヒロシマ・ナガサキ』『語りつごう沖縄』など、100点以上。
安斎育郎