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60歳以降の暮らし、どこにお金を使うべきなの?

「幸せ」を感じられる暮らしのためのお金の使い方

特集 100歳までのお金の使い方 2020.10.01

取材・文:出口夢々

退職し、これまでの安定した収入を得にくくなる60歳以降の暮らし。「この先何年生きるのかわからないから、なるべくお金を使わず過ごそう」と考える人も多いはず。とはいっても、ずっとケチケチした生活を送るもの嫌ですよね。そこで、老後の限られた収入のなかでも幸せに暮らすために、どこにお金を使うべきなのかを、ファイナンシャルプランナーの有田美津子さんに伺いました。

 

60歳以降の暮らしでは「健康寿命を伸ばすためのお金」を使うべし

出口:60歳以降の暮らしでは、どこにお金を使うべきなのでしょうか?

有田心身ともに健康に過ごすために、お金を使うといいですね。

出口:それは医療費ということですか?

有田:いえ、「悪くなったところを治すためのお金」ではなく「健康寿命を伸ばすためのお金」です。

仕事を退職して収入が減るし、娯楽にはあまりお金をかけないようにしよう、と思われる方が多いのですが、自分が「楽しい」と思えることをできない暮らしは幸せではないですよね。

すので、自分の趣味にお金を使って、暮らしを豊かにすることも大切だと思っています。そうすると、心身ともに健康になって、将来的に発生する医療費も少なくできるかもしれません。

出口:たしかに、仕事を辞めてせっかく自由な時間が増えたのに、好きなことができないのでは、気が滅入ってしまいそうですしね……。

有田:もし、健康に過ごすためのお金が心もとないのであれば、元気なうちは週に2~3日程度、働いてみるのもいいのではないでしょうか

「ずっと専業主婦だったから、今更外に出て働けるのかしら」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、「専業主婦」であることを活かせる仕事もあると思うんです。たとえば、今、人材不足といわれている介護の現場では、主婦の経験を活かせる仕事がありますし、そこで得た知識や経験は、逆に、自分の親を介護するときに活かせるので、一石二鳥以上の収穫があると思います。

出口:衣食住に関わる資金が確保できているのであれば、週に5日とか働く必要はないですものね。

有田:はい。あくまでも「好きなことをするためのお金」なので、無理して4日も5日も働く必要はありません。ですので、少し働いて、75歳くらいまでは楽しめるようにするのがおすすめです。

75歳以上になったら、年を重ねるとともに、おのずと行動範囲が狭まります。そのくらいの年齢になると医療費がかかるようになりますが、外出の機会が減れば、家での楽しみ方にシフトしていって年金のなかで暮らせるようになるでしょう。

85歳以上になったら、支払うべき費用は「介護費」です。この費用をケチると、介護をする家族の負担が増えてしまいます。ケチったつもりで在宅介護にしても、介護度が重くなるとヘルパーさんを呼んだり、24時間見守りサービスを依頼するとかなりの費用がかさみます。ですので、お金がかかっても介護施設に入居して、家族の負担を減らすことも考えておきましょう。

出口:なるほど。年を重ねると食も細くなるので食費もかからなくなりますよね。

有田:ええ。ですので、いろいろと動けるうちに趣味を楽しんでおくことも大切ですよ。

また、最近はZOOMなどといったオンラインでコミュニケーションを楽しめるツールが増えてきましたね。ZOOM飲み会は若い人たちだけでなく、年代問わずに人気なようです。ですので、自分が元気で家族に教えてもらったことを覚えていられるうちに、パソコンやスマホの操作に慣れておくといいと思います。そうすると、「膝が悪くてなかなか外に出られない」というような状態になっても、友人たちの顔を見ながら、おしゃべりできますよ。

趣味を楽しむことで心身の健康を保つ

 

医療保険への新規加入は試算をしっかり行ってから

出口:60歳以上の方がよく支払われているけど、払う必要のないお金はありますか?

有田:そうですね、最近、よくテレビのCMなどで「80歳からでも入れる医療保険」というような保険商品が宣伝されていますが、正直、加入しても保険料に見合った保険金をもらうのはむずかしいです。

出口:知らなかったです……! 保険に入っておけば、何かあったときでも安心なのかと思っていました。

有田:たしかに、若いうちから加入しておけば保険料は安いですが、高齢になってから保険に加入すると、保険料に見合った保険金をもらえるケースはきわめて少ないんですよ。それに、保険会社が定める要件を満たさないと保険金はおりませんから、一概に「病気になったらお金がもらえる」と思ってはいけません

出口:試算をして、よく検討してから加入すべきなんですね。

有田:はい。たとえば、1日入院して5000円を受け取れる医療保険では、60日入院してももらえる保険金は30万円です。手術給付金を入れても、40万~50万円の保険金しか受け取れません。ですので、そのお金を貯蓄で準備するのがむずかしければ、保険に加入することも検討しましょう。

「安心を買う」という面では、サプリメントやジムへの支払いも同じようなものですね。毎月頼んでいるけど飲み忘れてしまうサプリメントや、加入したけど全然通っていないジムにお金を払っていませんか?

購入や加入を決めたときは「買っておけば(入っておけば)安心だから」という一次的な気持ちだったかもしれません。きちんと使えているのであれば問題ありませんが、活用できていないのであれば支払いをやめて、その分を違う楽しみに充てたほうが楽しい暮らしにつながると思います。

買って安心、入って安心の商品は、継続できるかを見極めてから購入するようにしましょう

 

医療費よりも介護費のほうがお金はかかる

出口:「高齢になってから医療保険に加入するのであれば、試算してから」とのことですが、具体的に、医療費としてどのくらいの資金を準備しておけばよいのでしょうか?

有田:一概にはいえませんが、医療費は1人あたり200万~300万円用意しておけば安心です。医療費が1カ月の上限額を超えた際に利用できる高度療養費制度もあるので、保険適用となる医療を受けるのであれば、医療費はそこまでかかりません。

ただし、先進医療など、保険適用外となる治療を受けることになった場合、この制度は使えなくなってしまいます。もし、終身保険など長年加入していた貯蓄型の保険があれば、それを解約して、その解約返戻金を治療費に充てると、家計が逼迫することなく安心して治療できるでしょう。

制度の活用によって支出を抑えられる医療費に対して、介護費は介護度や介護期間により想定外にかさみます。介護保険の適用となる特別養護老人ホームは、要介護度が3以上でないと入居できませんから、状態によっては民間の介護付き老人ホームへの加入を検討しなければなりません。

出口:夫婦の場合、「妻は要介護度が3以上だから特別養護老人ホームに入れるけど、夫はそのレベルには達していないから介護付き老人ホームしか入れない」というような状況が発生しそうですね……。

有田:そうなんです。この場合、奥さんも旦那さんも介護付き老人ホームに入居したり、在宅介護にすることでしか、一緒に暮らし続けることができません。「一緒に暮らしたいけど、資金がないから自分たちの希望を叶えられない」という、残念な思いをせざるを得ない方たちがいるのも事実です。ですので、医療費よりも介護費に対して心構えをしておく必要があります。

また、夫婦どちらかが老人ホームなどに入居する場合、一方は自宅で過ごすため、生活費が二重にかかります。そのような状態になったときに重要になるのが、「不動産価値のある自宅を持っているか否か」です。不動産を所有していれば「リバースモーゲージ」という制度を利用して、自宅などの不動産を担保に銀行から融資を受けられるなど、自宅を資産として活かす方法も考えられます。

出口:なるほど。要介護状態になったら自宅に住み続けるのはむずかしいでしょうから、こうした制度を活用して資金に都合をつけるのもよいですね。

有田:ただし、この制度を活用するにあたって必ず行ってほしいのが「家族間での話し合い」です。リバースモーゲージを利用して融資を受けると、原則として、居住者が亡くなった際に自宅を売却する必要があります。ですので、息子さんや娘さんが、自宅を相続したいと思っていたら、勝手に家を担保にお金を借りてはトラブルになります。

出口:介護の問題も影響しますから、自分たちの意思を次の世代に伝えることが重要なんですね。

有田:そうです。介護のお金が足りないと、次の世代に迷惑をかけてしまいます。ですので、家族間で必ずコミュニケーションをとりましょう。

医療や介護など、老後の暮らしを不安に思う気持ちはわかりますが、資金不足に備えてずっとケチケチと暮らす必要はありません。今後の生活にかかる費用や収入、お金に替えられる資産を把握して、ゆとりがあるようであれば自分が幸せだと思う暮らし方ができるように、お金を使っていいんです。「生きる楽しみ」を心のなかで押し殺してまで節約し続ける必要はないんですよ。

 

オフィス情報
50代からの住まいのお金相談室

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有田美津子

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー、相続診断士。銀行での住宅ローン相談、住宅販売、損保会社を経て独立。現在は人生と仕事の実務経験を活かし、子育て世代の住宅購入とシニア世代の住替え相談を行う。ライフプランに沿った資金計画から物件の引き渡しまで一貫したサポートが好評。共著・監修に「トクする住宅ローンはこう借りる」(自由国民社)。
有田美津子