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しら露もこぼさぬ萩のうねり哉——芭蕉はどんな情景を詠んだのか

白露を溜めた萩の花の情景を詠んだ芭蕉の句

連載 魂の俳句 2020.11.13

文:花塚水結

季節にあった季語を用いた俳句を紹介する連載「魂の俳句」。

第1回目は、「しら露もこぼさぬ萩のうねり哉」(松尾芭蕉)。季語や意味、どんな情景が詠まれた句なのか、一緒に勉強していきましょう!

そして、その俳句を題材にして、大学で書道を学んでいた花塚がかな作品(日本のかな文字を用いて書かれる書道のこと)を書きますので、そちらもお楽しみに!

 

芭蕉が杉山杉風の別邸採茶庵に咲く萩を見て詠んだ句

 

しら露もこぼさぬ萩のう(憂)ねり(利)か(可)な

俳句:しら露もこぼさぬ萩のうねり哉(しらつゆもこぼさぬはぎのうねりかな)
作者:松尾芭蕉(1644−1694)
出典:真蹟自画賛(こがらし、栞集)
季語:萩(秋)
意味:白露をいっぱい溜めた萩の花。風に吹かれて大きくうねっても、その露を落とさずに揺らめいている

1693年(元禄6年)秋、芭蕉が杉山杉風の別邸採茶庵に咲く萩を見て詠んだ句だと言われています。「白露」も季語ですが、この句では「萩」が主役なので、「萩」が季語です
松尾芭蕉は1694年に亡くなっているので、晩年の作品となります。

季語になっている「萩」は、マメ科の落葉低木です。山野に自生し、初秋には白や紅紫色の蝶のかたちをした小さな花をたくさんつけます。秋の七草の1つです。

紅紫色の萩の花

1695年(元禄8年)刊『こがらし』では、「白露をこぼさぬ萩のうねりかな」と詠まれ、1812年(文化9年)刊『栞集』では、「白露もこぼれぬ萩のうねり哉」と詠まれています。

「しら露もこぼさぬ萩のうねり哉」は、芭蕉の真蹟(芭蕉が直筆であると証明されていること)として書かれた画賛(絵の余白に書き記された文言や詩文のこと)なので、記事の冒頭に記載しました。
私個人的には、「露をこぼさないぞ!」という萩の強い意思が感じられるので、「こぼさぬ」のほうがいいなと思います。

実は大学時代に書道をやっていたのですが、卒業して約2年半ぶりに筆を持ちました。集字や構成を考える作業がとても懐かしくて、久しぶりに何かに没頭した時間になりました。

俳句の意味のとおり、もう少し「萩」が揺れる感じができたらよかったなぁとか、平仮名が多くなってしまったなぁとか、反省はいろいろありますが……。それも生かしつつ、次もチャレンジしてみたいと思います!

 

俳句に興味がある方や、この俳句を読んでの感想などを、コメント欄で教えてください(そして、私のかな作品の感想も聞かせてもらえたら、うれしいです!)。

 

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