みじか夜や毛むしの上に露の玉——蕪村はどんな情景を詠んだのか
夏の夜の涼しさを詠んだ蕪村の句
文・書:花塚水結
季節にあった季語を用いた俳句を紹介する連載「魂の俳句」。
第10回目は、「みじか夜や毛むしの上に露の玉」(与謝蕪村)。季語や意味、どんな情景が詠まれた句なのか、一緒に勉強していきましょう!
そして、その俳句を題材にして、大学で書道を学んでいた花塚がかな作品(日本のかな文字を用いて書かれる書道のこと)を書きますので、そちらもお楽しみに!
明け方に蕪村が詠んだ句
俳句:みじか夜や毛むしの上に露の玉(みじかよやけむしのうえにつゆのたま)
作者:与謝蕪村(1716-1784)
出典:自筆句帳
季語:短夜(夏)
意味:夏の短い夜が明けたころ、露の玉が毛虫の上で輝いていた
季語は「短夜」で、季節は夏。
意味は「夏の短い夜が明けたころ、毛虫を見つけた。その上で露が輝いている」。俳句だけでなく、画家としても多くの作品を残した与謝蕪村が詠んだ句です。
「短夜」とは「夏の夜」のことを指しますが、「夏の夜」と聞くと寝苦しい熱帯夜をイメージする方も多いのではないでしょうか。
しかし、1212年に書かれた『方丈記』のころから「短夜」は「夏の涼しさ」を詠んでいることが多く、そこに風情が感じられます。
“毛虫” を美しく表現
私はこの句をはじめて鑑賞したとき「毛虫」に若干の違和感を覚えました。虫が不得意だからなのか、虫を発見したときのゾッとする感じがして、「毛虫ではなくてもいいのに……」と思ったのが正直なところです。
この「毛虫」について俳人で随筆家の河東碧梧桐は、下記のように評価をしています。
毛虫といへば平生厭な心持のするものを、この句では却て美しいものゝやうな感じがする。その点が即ちこの句の面白いところで、夏の夜の明け放れた頃の、涼しい目覚めるやうな感じがよく現れて居ると思ふ。
正岡子規、内藤雷鳴、高浜虚子、河東碧梧桐ほか『蕪村句集講義2』(平凡社)60ページ
「夏の明け方と露の玉といった情景に上手く調和している毛虫……うむ、美しい」と捉えるべきところでしたか……。
鑑賞を深めるにはまだまだ想像力が足りないようです。毛虫を美しいものとして感じるためには、道のりが遠そうだなと思いました。
みなさんは、毛虫についてどう思われましたか? ぜひコメント欄で教えてください。
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